人と違うところ

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「愛衣が嫌がるかなって思ってて言わなかったんだけどね。お母さんにも昔は見えていたの。可愛い可愛い不思議な生き物たちが……琥珀糖とキラキラが大好きなカモノハシだって……」  お母さんは私の頭を優しく撫で、懐かしそうな顔をしている。 「お母さんにも見えてたの??」  私の質問に対してお母さんは少し困った顔をすると琥珀糖を一口食べた。 「大きくなっちゃったらね、見えなくなっちゃったの……あの子たち。この道には特にいっぱいいたんだけどなぁ。でもね決して悪さはしないのよ? ふふっいたずらはするけど。自由に漂っていて気ままに暮らしている」  お母さんにもこの存在が見えていたなんて初めて知った。子供ながらに衝撃を覚えたことを今でも覚えている。 「今、愛衣の周りにいる子たちはどんな顔をしているかな?」  私は、涙を拭き周りを見た。みんな心配そうな顔をして私を見ている。風船のようにまん丸な狸はいつもより萎れているし、狐のススキのような尻尾はだらりと垂れ下がっている。他の子達もみんな私を見つめていた。  いつもと様子が違う私を気遣ってくれているようだ。 「みんな、私を心配してくれてる……」 「ふふふっ変わらないのね」  お母さんは優しい笑みを浮かべると、屈んで私に目線を合わせた。 「愛衣。この子たちが見えて辛い思いをするかもしれない。でもね、お母さんもお父さんも含めて何があってもこの子たちはあなたの味方よ? ずっとあなたを見守っててくれるし、助けてくれる。悲しいこと、嫌なことがあったらこの道に来なさい。あなたはとっても優しくて慈悲深い子だってみんな知ってるから」 「うん!」  私が笑顔を見せると、不思議な生き物たちは宴だと言わんばかりにいつもの活気を取り戻した。どこからともなくひらひらと舞う花びらや、自身の腹を太鼓の様に叩く蛙に、羽の生えた兎が踊る。  この子たちを受け入れた時のその鮮やかな光景は何にも代えがたい宝物になった。
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