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第十一話 幸せに浸る
「よくできました」
「ひっ…ァッ」
どうにも慣れる気がしない。ロイのものを受け入れるのはこれが初めてではないのに、ぐっと押し込まれる圧力に下腹部が軋みをあげる。
「アヤのなか最高」
「……んっ…ぁ…~~っ…」
時間をかけてゆっくり挿入されたあと、内壁の感触を堪能しながら奥の扉をぐにぐにと押される。落ちそうになる腰をロイの両手で掴まれて、密着した部分をかき混ぜるような感覚に吐息が零れる。
「ふぁ…ァッん…ゃ」
手首をそれぞれ掴まれて、思わず放してしまった泡まみれの竿が乳首にこすりつけられる。不安定になった身体は自分でバランスを保てず、三人の輪の中で自由に揺らめく。ロイの手が繋がる部分をなぞるように、後ろから伸びてきて固く尖った核を無遠慮に引っ掻いた。
「やっばぁ。食い千切られそうなんだけど」
何がそんなに嬉しいのか、突起物をこねくり回されて喘ぐ肩にロイがキスを落としてくる。
「アヤ、ほら。ボクの上に座って」
「にゃぁっアッぁ」
つるっと抱き寄せられた身体が、ロイの上に腰を打ち付ける。
その感覚に今まで我慢していた声が漏れ出て、アヤはまた顔を赤く染めた。
「可愛い子猫ちゃん。もっと鳴いて、声聞かせてほしいな」
「…違…っいまのは…ぁ…」
「ほら、アヤの可愛い姿にスヲンもランディも興奮してる」
「…ッん…ァ…ぁ」
ロイの上にまたがりながら右の乳首にランディ、左の乳首にスヲンを感じる。たしかに両方とも突き刺すほど大きく育っていて、再度握りしめてみると、浮きたつ血筋が嬉しそうに脈打っている。
泡まみれでどこまで洗えばいいのか。
ロイを感じながら二人のものをしごいていると、突然シャワーからお湯が注がれて、泡が排水溝に消えていった。
「ンッぁ…む…~~~ふっ」
アゴを持ち上げられてスヲンが唇にすり寄ってくる。口を開けて咥えると、スヲンが頭をよしよしと撫でてくれた。この瞬間は嬉しい。スヲンを見つめながら口に含んだものをなんとか舌で舐めていく。
「アヤ、手はこっちな」
「んンッ…ぅ」
ランディにいわれるまま自分の胸を左右から中央に寄せる。
またボディソープを付け足したのか、ランディのものが胸の中央を出入りするように輸送を開始していた。
「…ぁ…ッん…ぅ…ぁ…クッ」
ランディの巨根を挟めるほど育っているわけでもない一般的な胸。豊満さを求めるなら、他にも適任者は沢山いるだろう。見目を求めるにしてもそう、どこを好きになってくれたのかいまいち自信が持てないが、こうして興奮した姿を見せられると優越感がこみあげてくる。
感じてくれている事実が嬉しい。
この肌で、体で、乱れた姿を可愛いとキスをくれ、撫でてくれる手が溺れるほどに気持ちいい。
「ッん、ンンッ」
スヲンに後頭部を掴まれて、また喉奥まで責められるのを合図かのように、ランディが乳首をつまんで激しくこすりつけてくる。それはロイにも言えることで、下からも上からも前からも激しくなっていく律動にアヤは身を任せながら感じていた。
浴室は音が響く。
湿気が肌にまとわりついて、水滴が顔や背中を流れていく。髪から滴る雫は冷たく、それなのに脳が溶けるほど熱い。ぐちゃぐちゃと混ざり合う音と音の融合に、白い世界がちらついていた。
「ッふ…ぁ…ァッ~~~くぁ、クッ‥ぁっ」
もう我慢の限界だった。
声も出せない。逃げることもできない。絶頂を受け入れるしか出来ない身体が、彼らに限界を伝えている。スヲンを見つめる瞳にその意味を込めてみると優しく頷かれ、両手と胸で挟むランディの手も優しく重なってくる。下から突き上げてくるロイの動きが「いいよ」という風に掴み直されて、アヤは素直にその快楽を受け入れた。
「~~~~~~ッ」
鼻から繰り返す息も限界で、せりあがってくる快感の渦に耐え切れない欲望をはじけさせると同時に、アヤは全身に同じ欲望を吐き出した三人の体液を浴びていた。
顔にスヲン。胸にランディ。太ももにロイ。
白濁した液体は、ぐったりと力を失くした身体を惜しみなく汚していく。それが嬉しくて、なんだかおかしくて、アヤは額や肩や手にキスをくれる彼らの中心でくすくすと声をもらす。
「ふふ、いっぱい」
誰のせいだと非難がましくみられるのも悪くはない。
再度、全身を全員泡まみれになりながら洗い合って出るころには、すっかり日も落ちて窓から夜景が望めるほどになっていた。
「おい、じっとしてろ」
これは夜景に自然と顔が向くアヤに対して、髪を乾かしてくれているランディが怒る声。
「アヤ、目閉じて」
「はい」
これは、お風呂上り後の美容液やクリームを塗りたくってくれるスヲンの声。ちなみにロイは今、台所で全員分の夕飯の準備をしている。
ダメ人間まっしぐらだが、今日はそういう気分だったことを思い出して、アヤは休日出勤のご褒美くらいもらってもいいかと、されるがまま身を任せている。
「どうして、そこまでしてくれるの?」
美味しいご飯を食べて、三人の腕に抱かれて眠って、満足な幕開けを降ろした翌朝。アヤは正式に自分の彼氏となった男たちが、ちょっと異常なことにようやく気が付いた。
ダメ人間になるどころではない。
想像以上の尽くしっぷりに、このままでは何も出来なくなる恐怖を感じていた。
「そこまでって?」
右側にロイ。左側にランディ。目の前にスヲン。朝から美形は健在である。
朝食恒例の餌付けをしてくるロイが、首をかしげて不思議そうな顔をしている。いや、食事担当かと問いたくなるくらい、昨晩の夕食もロイの手によってほとんど食べさせられたことを思い出す。朝食くらい自分で食べられると、ここは拒絶するところなのだと頭でわかっていながら、アヤは差し出されるままのスクランブルエッグを口にしていた。
「美味しい?」
「うん、美味しい」
「よかった。アヤがそう言ってくれて卵も喜んでるよ」
にこにこ、もぐもぐ。ロイの笑顔につられて、微笑む。
スヲンはタブレットで何かを閲覧しているし、ランディはコーヒーを飲んでいる。円形のテーブルで同じ朝食を囲めるのはいいことだが、スクランブルエッグを飲み込むと同時に、アヤは質問が流されている空気に気づいて、ハッと思考を元に戻した。
「次は、これかな。はい、アヤ。あーん」
「じゃなくって、ロイ、いい加減自分で食べた…ッむ」
「ん、違った?」
意見が通じない。アヤは両手で口を保護して、これ以上ロイに食べさせられないように首を横に振った。
「アヤ、しっかり食べろ」
「ランディ。そんなこと言ったって、ロッ」
頭を撫でるように引き寄せたランディに助け舟を求めようとしたのが敗北の原因。
開けた口にロイが食べ物を放り込んでくる。起きてから始終この状態に調子が狂う。
寝起き。トイレにいって、歯を磨いて顔を洗って、そこまでは順調に進んだと思う。正確には歯を磨いてあげると三人に迫られたが、丁寧に断った。けれど戻ってきたあとは、スヲンに服を着せられ、ランディに髪をセットされ、またスヲンにメイクされて、ランディに靴を履かされた。そして、今。ロイに餌付けされながらの朝食。
服も靴も自前ではない。
なぜかサイズぴったりで、たぶん高級ブランドものだと着心地でわかる。
「スヲンからも何か言っ…むぅ」
「アヤ、今日はどこか行きたいところはある?」
だめだ。誰も話を聞いてくれない。
口を開けばロイは食べ物を放り込んでくるし、拒否すればランディが加勢してくる。スヲンはタブレットで今日のデートスポットを検索していたらしく、お勧めの場所をいくつかピックアップしてくれていた。
「別に、特には…ッ…」
今度はそうはさせないと。アヤはロイに食べさせられる前に、自分のフォークで差したソーセージを口に入れて噛み切る。もぐもぐとドヤ顔になるのもどうかと思うが、この攻防はまだしばらく続きそうなのだから仕方がない。
そんな攻防戦を朝から体験したあと、アヤは「自然に癒されたい」と口にしたことで急遽決まったドライブを堪能していた。
海の見えるレストランで昼食をとり、小さなお店が立ち並ぶ場所に手当たり次第に入る。正直、めちゃくちゃデートっぽくて、めちゃくちゃ楽しかった。エスコートがこなれているのは、さすがというべきか、レディーファーストという言葉すら噛み締めるほど満足度は高い。
帰り道。運転手はランディ。助手席はスヲン。後方にロイと並んで座るが、今さらながら今日が日曜日だということに気付いて、アヤは三人を借り出したことを後悔する。
「明日仕事なのに、こんな遠出させてしまってごめんなさい」
荷物を片付けていたスヲンと出前のピザをテーブルに広げていたランディが、ソファーの上で靴を脱がせて足を揉んでくれているロイと同時に顔を向けてくる。
「ボクはすごく楽しかったけど?」
「俺も楽しかったよ。アヤとデートできて」
「ああ、オレも」
こういうときは「ありがとう」なのだと、心が軽くなって迎えた週明け月曜日。アヤはいつもの仕事スタイルで職場のフロアに向かうエレベーターを待っていた。
たった一日だけしか休日がなかったなんて、嘘みたいに心が晴れやかだったのに、エレベーターに同乗した人物の顔を見るなり、その心は急速にしぼんでいった。
「……ハリソン」
まさかの土曜日。三人との恋愛事情を暴露してしまった相手の顔をみて、アヤは固まる。ロイ達は放っておいて大丈夫だと言っていたが、本当に大丈夫なのだろうか。
社内恋愛は出来れば広めたくはない。
そうでなくても相手はあの三人。
口止めをしておくべきかもしれない。だけど、どうやって。
「アヤ、おはよう」
「セイラ、おはよう」
「どうしたの、ハリソンなんか見つめて」
「えっ、いや。なんでもない」
エレベーターの中はセイラの個人談義だった。彼氏と喧嘩したらしい。週末は散々だったと愚痴を聞いているうちに、エレベーターは目的の階に到着した。
「……あ」
ハリソンが行ってしまった。せっかく話しかけるチャンスだったのにと思う反面、かける言葉がわからない状態ではこれでよかったのかもと思う。というか、セイラには話しておくべきだろうか。
「大体、彼氏好みに染まる女をあたしに望むなっての」
無理かもしれない。
今は人の話を聞ける状態じゃないだろうと勝手に判断して、アヤはセイラともそこで別れた。
「おはよう、アヤ」
「デイビット、おはようございます」
「休日出勤お疲れ様。疲れてない?」
「私は大丈夫。デイビットは?」
「全然。休みが一日じゃ、何もやる気が起きなくて寝てただけ。アヤは何してたの?」
「私は……まあ、適当に」
三人の彼氏が出来て、デートを楽しみました。なんて言えるわけもなく、社交辞令程度に誤魔化す。月曜日ごとにデイビットは同じ質問をしてくるが、アヤも同じ答えを毎回返すので特に怪しまれることはなかった。
何も変わらない普段通りの光景。
資料をコピーして、ファイリングして、システムに入力して、掃除をしたり、届けモノをしたり雑用をこなす。来客を案内して、コーヒーを出して、片付けて、メールの問い合わせに答えたりしていると、とっくに一日は終わって定時を迎えていた。
「おかえり、アヤ」
何も変わらない時間を過ごしても、確実に変わった部分もある。
それが真っ直ぐに帰る場所。ロイが一番に出迎えてくれるが、ハグしてキスしてカバンを取られて、腰に手をまわされて部屋に入る過程は、ほっと肩の力が抜けてくる。
「おかえり、アヤ。ご飯できてるよ」
「アヤ、おかえり。システムはもう慣れたか?」
スヲンもランディも会うなりハグとキスを求めてくる。美味しそうな手作り料理は相変わらずだが、高そうなワインまで添えられていると言葉につまる。こんなに贅沢と幸せを味わってもいいのかと不安にまでなってきた。
「いいんだよ。アヤの喜ぶ顔を見たいし、オンとオフの切り替えは上手にしたほうがいい」
「苦手なものがあったら先に言っとけよ」
「アヤ、服着替えるんでしょ。シャワー入るなら先にする?」
「……甘やかしすぎだよ。私のこと」
「全然足りないくらいだよ。アヤは自分からワガママ言わないから、俺たちはもっとしてあげたいと思ってる」
スヲンの言葉にランディもロイもうなずいている。
「甘える特権を持ってるんだから好きなだけ使え」
ランディの大きな腕の中にいると、本当にそうしていいんだと少しだけ安心する。
大人になればなるほど、甘えることを忘れていく。特に、ひとりでこなせることが増えた分、誰かに頼ろうという気持ちは薄れたかもしれない。
「……だからって、これはやっぱりやりすぎなのでは?」
「一緒に入るためにこのサイズを選んだんだから、一緒に入らないと意味ないでしょ」
浴槽内で背中をあずけるロイが、浮かんだ泡をかき集めてシャボン玉を作っている。スヲンもランディも一緒につかっているが、今日も今日とて、隅々まで丁寧に洗われてしまった。
疲れているのはお互い様なのに、至れり尽くせりではなんだか申し訳ない。
「アヤはいつ頃引っ越せそう?」
「え?」
スヲンの問いかけに疑問符が浮かぶ。引っ越すとは、ここにという意味だろうか。
「ここに、住んでもいいんですか?」
「当たり前だろ」
「そうだよー。アヤ、早く一緒に暮らしたい。そのために用意した愛の巣なんだからアヤが来ないと意味ないじゃん」
「……え、用意?」
聞き間違いだろうかと、後ろのロイを見上げるように、首を直角に曲げてその顔を仰ぎ見る。ニコッと天使の笑みで見下ろされて、鼻先に軽いキスを落とされた。
「さあ、そろそろあがってご飯にしよう。アヤもおなかすいたでしょ?」
「えっ、あの。ロイ?」
「はい、アヤ。ストップ。タオル持ってくるから、そこで待つこと」
「えっ、あ。はい」
そこからはお決まりのようにランディに頭を乾かされて、スヲンにケアをされる。ロイに意味を問おうにも、餌付けの攻防に流されて、その日も気付けば眠っていた。
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