竜の世界

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竜の世界

 世界は、竜に襲われていた。  竜たちを統べるは竜の魔人。  朽ちた城砦に、ただひとりたたずんでいた。  空には無数の飛竜が舞っている。しかし彼らは、城砦に誰かが侵入しようとも襲いかかることはなかった。そのため、人々は誰でも城砦に入って魔人に近づくことができた――命さえ(かえり)みなければ。  故に、多くの者たちが魔人に挑み、ことごとく死んだ。  腕に覚えのある冒険者が、誰ひとり帰らなかった。  各地の名だたる英雄が、傷ひとつ付けられず一蹴された。  一万もの精鋭たちが、竜の息吹でひとり残らず消し炭にされた。  人々は絶望し、魔人討伐を諦めた。竜たちの暴虐に耐え忍ぶほかなかった。  今も魔人は、城砦にひとりでたたずんでいる。
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