遺恨

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─27─  体育館の前まで来た。 「──開けますね」  二人にそう告げ、ゆっくりとドアを開けた。  目に飛び込んできたのは、タイムスリップしたような風景だった。  今にも、ドリブルの音、シューズのスキール音、生徒たちの掛け声が聞こえてきそうなほど、当時のまま。  穏やかな、放課後だ……。  体育館は、無数の小窓から放射状に夕日が差し込み、全体を茜色に染めていた。床に反射した光が眩しく、自然と目を細める。  体育館の真ん中を通り、左奥の倉庫へ向かう。  俺は感じていた。この三人が残ったのは偶然ではなく、必然だと。神野がそう仕向けたのだろう。現に、美雪が殺されたことを最後に、化け物は姿を消している。それどころか、気配すら感じない。  この三人で、見届けなけらばならない何かがあるのだろう。そこに、陽太がいるのかはわからないが……。  神野の気が済んだあと、俺らは生かされるのか、殺されるのか……。  倉庫の前に立ち、二人の顔を見つめ、ドアを開ける。  開けた瞬間、マットの匂いやボールのゴムの匂いが、鼻腔を刺激する。  どうして匂いとは、当時の情景を記憶しているのだろうか……。 「ここで亡くなったんですよね……」  俺の言葉に反応するように、赤井先生と神野桃花が現れた。  ──幻覚がはじまった。
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