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15.情報2
報告書を読破すること三日。
漸く読み終わった感想は、「これって暴露本では?」の一言に尽きた。
王家の暴露本にしか思えない。
しかもこの一部分が市井に流通している事実に驚く他なかった。
でも納得した部分もある。この量の情報を集めるのにはそれなりの時間と労力が必要だったにも拘わらず、短期間で調べ上げたメイド達。勿論、裏付け作業はきちんとしている。この情報の大半を貴族達は共有しているんでしょうね。でなければ此処まで調べ上げられる訳がない。
それと、この国の人達が隠し立てをしていない事も功を奏した筈だわ。
王太子の友人であり、側妃の取り巻き達は既に別の女性と結婚している。日付まで書かれているし。どうやら最近になって立て続けに婚姻をしているところが少し引っ掛かるけれど……。それを知った時の側妃の取り乱しようは尋常ではないと書かれているところが気になります。側妃とはいえ、彼女は王太子に嫁いだ身。何故、他の男性の婚姻に心乱れるのか謎です。…………浮気……はないですね。報告書では後宮の作法に従って入ったとありますから事前の検査はされたはず。そうなれば誤魔化しはできませんからね。
ミレイ側妃は、清らかな身で後宮入りしたのは間違いないでしょう。
そうなれば、仮にミレイ側妃と取り巻き達との間に何かがあったとしても一線は超えてませんから追及されなかったのでしょう。各家もホッとしたと思います。
あぁ……もしかすると、疑念が本当になる前に各家が手を打った可能性もありますね。一族郎党縛り首になる前に動いたとも言えます。
それにしても――
「優秀な教育者達から匙を投げられ、貴族からそっぽを向かれてもへこたれないメンタルは凄いわ」
ポツリと呟いてしまう。
「この精神力はある意味で貴族向きともいえるわね。それを教育に向けていればあるいは……」
少しだけ考えてしまった。
もし、その考え通りに事態が進んでいればどうなっていたのかと……。
……――――――たらればね。考えても無駄な事だわ。
妃教育の初歩で躓いている……いいえ、やる気のない彼女の教育はするだけ無駄でしょう。
基本的なマナーもできない側妃。
それでも王太子の唯一の妃。
微妙な立場ではあるものの、貴族達は無視もできない状況にいるみたいだわ。
マデリーン様を正妃に据えていれば未だ違ったんでしょうけどね。形だけでも婚姻していれば、王太子殿下とミレイ側妃の待遇も今とは全く違ったものだった筈だわ。もっとも、マデリーン様の犠牲の上に成り立つ幸福だったでしょうけどね。
そう考えると、これで良かったのかもしれないわ。王太子殿下は自分が王になれると考えている。今までなら何の問題も無かったでしょう。けれど恋に盲目になってしまったのが王太子の運の尽きね。彼が国王になる事を望んでいる貴族は一体どれだけいるのかしら?
自分が見限られないとは考えないのかしら?下に二人も弟がいるというのに。自分の代わりは二人いる。そのことに王太子殿下は気付いているのかどうか……。
何かしら。一波乱ありそうな予感が……。
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