8.決戦の土曜日

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朝食のあと、準備がてら掃除をしたけれど、あっという間に終わってしまった。次に本でも読もうと小説を取り出したものの、開いたページの文字はするすると滑り落ちていくようで、全く頭に入ってこない。 大きく息を吐きながら、まったく捲られていない本に向かって突っ伏した。 ーーーーー天気いいな。散歩でも行こうかな。 窓から覗く暖かな日差しはとても魅力的に見えた。 小さな鞄に財布と携帯だけ突っ込んで家を出る。 アパートの下の、大家さんが手入れをしているらしい花壇には、黄色い水仙が咲き誇っていた。 外の空気を吸って大きく伸びをしながら、どうせなら料理でもしよう、と思い立った。レシピ通り順番を守ってこなしていく作業は、いやでも集中できて気持ちも紛れる気がする。 もともと、何かを作ったり目的がはっきりしていく作業は好きだ。家事にしろ、仕事にしろ。 軽い足取り向かったスーパーからの帰り道、花屋に立ち寄ってミニブーケを買ってみた。ワンコインだけど、テーブルに置けば華やかになる気がする。 家に帰ってからは、レシピを見ながら、ひたすら作り置きに勤しんだ。熱中する一方、他のことには興味がなくなる質ゆえに、昼食も作ったものの味見で済ませてしまった。 メイン料理2つに副菜4種、タッパーに詰めて、満足感に浸る。上から写真でも撮ろうかと思ったけれど、光の加減が上手く調整できないので諦めた。インスタ映えとか、向いていない(そもそもやってないけど)。
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