わたしのこと憶えてないよね?

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「始めましょうか」  タイムイズマネーだ。当然の如く流れがスムーズで、無駄な時間はまったくない。うつ伏せになるように言われ、震えながらベッドにうつ伏せになった。がちがちの緊張を解すように、彼は普通のマッサージから始めた。今回利用したのはちゃんとしたお店なので、昨日今日入ったぽっと出の人が来ることはなく、セラピストのメンズはきちんとした教育を受けていると説明があった。マッサージの講習も受けるらしいので、すごく上手だ。世間話を交えながら進んでいくのは、一般的なマッサージ店とそう変わらない。うつ伏せだと顔が見えないし、ちょうどいい。整った顔を見ていると、リラックスできない。  心地よいアロマの香りと手技に微睡んでいると、彼の手が際どいところに触れだした。解れていた体に再び緊張の波が訪れる。普通に気持ちよくて、本来の目的を忘れるところだった。今日は凝りを解しに来たわけではない。ここまでは序章で、ここからが本番なのだ。いや、本番(、、)はないのだが。  内ももをなぞる指は、焦らすように次第に敏感な部分へと……。
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