WAY

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「やっぱあの大学に行きたいよなぁ。春鹿(はるか)もそうだろ?」 部活を終えて学校から駅に向かう途中、孝介はそうつぶやくように言った。 「ムリムリ。いくら頑張ってもスポーツ推薦、私達じゃ取れないから」 孝介が言っている大学は箱根駅伝の優勝常連校だ。陸上部で長距離を走っている私と孝介には憧れの大学で、孝介は選手として、私はマネージャーとして箱根駅伝に参加したいという夢を中学生の頃から持っている。  けれど、高校一年がまもなく終わる今、どんなに頑張ってもスポーツ推薦をもらえる成績が大会で残せる気がしない。 「そんなに簡単に自分の夢を捨てるなよ。春鹿はすぐ諦めちゃうからな。今日の練習だって、もうちょっとストライドを大きくすればあと一分はタイム縮められたのに」 「うるさいなぁ。孝介は真面目過ぎるんだよ。そんなに神経質だとまた試合前に下痢するよ」 高校から駅までの5分間、陸上部の練習の後にこうして私達は隣り合って歩く。夏は夕映えが淡く燃える空の下を。冬は星々の中冷たい街灯の光が灯る下を。ただの部活仲間でクラスメート。でも、私にとっては一日で一番楽しい時間だ。 「なんとかして入学できないかな? まずは今年の県大会で成績を残すためにタイムを……」 「タイムも大事だけど、レギュラーに選ばれることが先じゃない? 私達の弱小陸上部でさ」  孝介は痛いところを突かれたという風に顔を歪める。それから少し考えて不意に瞳を輝かせた。 「そうだ! 一般入試で入れば良いんだ!」  私は呆れたような表情で孝介を見る。 「あんな難関大学、私達には無理に決まってるじゃん。それに、一般入試で入れたとしても、スポーツ推薦で入学して来た部員ばかりの中でどうやってレギュラーになるつもり?」
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