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第0章 序章…。
運命には、
2種類あるのかもしれません。
共に生きられたら幸せな運命と、
悲しみに焦がれると知りながらも…
愛してしまう運命と…
時は西暦218年03月03日。
後漢帝国を牛耳る曹操も最早
初老と称される年齢となりました。
曹操「儂も63歳になるとは…我らもいつどうなるか分からぬ故花見にでも参ろうか?」
こうしていつになく弱気な曹操は、
配下の者達とその家族、自らの家族を伴い桃の花を皆で見る事にしました。
玅珍「花見とは久方ぶりにございます。いつも妙才様の代わりに子育てだの…家の事だのしていたらあっという間に月日は流れシワばかりが増えました」
玅珍は夏侯淵の妻で夏侯覇を始めとするたくさんの子らを産み育てる肝っ玉母さんである。
夏侯淵とは身分違いの恋ではあるものの仲睦まじくいつも2人は隣にいないと落ち着かない程…
夏侯淵「おーい、そんな事を言うなよ。何だか切なくなるだろう…」
夏侯淵も嘆き節を口にしながらも
玅珍の右手を自身の左手で包み込むように握ると玅珍は幸せそうな笑みを浮かべておりました…。
すると曹操は何故なのか定かではないもののある不思議な現象を思い出し…
隣に座る曹休に声を掛けました…。
曹操「しかし…あれは…今、
思い出しても不思議な現象だった…
文烈にも聞かせてやりたいから少しばかり語るとするか…」
曹操と曹丕の事が誰より好きな曹休は
曹操からの言葉に大きく頷き嬉しそうな笑みを浮かべていました…。
曹休「殿、
それは是非お聞きしたいです。」
曹休…字は文烈は、
とても素直な性格をしており曹操の甥の中でもとても気に入られている。
そんな曹休は曹操の姉である曹桃麗の息子として産まれましたがその父親は曹休が産まれてすぐ命を落としました。
曹操「…では切ない物語を話そう。」
曹操寿春は後に魏が平定しましたが、
その際、袁術が溺愛する馮琳の墓としていた
古井戸前には色鮮やかな彼岸華が咲き誇っておりこれには曹家の者達も馮琳からの呪いを恐れ震え上がりかつて袁術がしたよりも手厚く供養したそうでございます。
馮琳「陛下。」
馮琳はただ純粋に袁術を愛しただけでした。
それなのに嫉妬に狂った女性達の手で
悲惨な最期を迎える事となってしまいました。
時は西暦197年05月20日
ここは袁紹の異母弟である袁術が
勝手に建国した仲の国である。
仲の国に作られた袁術の後宮には、
たくさんの美女達が入内していました。
その中で一際美しさを放っていたのが、
馮琳〈ふうりん〉…字は春來〈しゅんらい〉
皆から馮氏と呼ばれた20歳になったばかりの女性でございました。
袁術「春來よ、そなたはどの女性よりも美しい…。永遠に余の側で咲き続けておくれ。」
馮琳「勿体なき御言葉でございます。
私など袁術様には相応しくありません。」
実は馮琳、自分で物事を考えるのが、
とてつもなく苦手だったのです…。
そんな誰かに意見を求めなきゃ
決断出来ない馮琳が何故後宮に
入っているのかと申しますと…
事の起こりは今より1週間前の
西暦197年05月13日の事でございました。
黄巾の乱、董卓、リカク〈変換不可〉、
カクシ〈変換不可〉呂布などなどにより
翻弄され続けていた中国全土。
そんな中馮琳が避難した先が袁術が
皇帝を名乗り仲王朝を建国し首都とした
寿春でございました。
袁術「あの美しき娘はどこの誰じゃ?」
馮琳の事を城の中から見てひと目ぼれした
袁術は上等な絹織物や華美なる装飾品などを
貢ぎ馮琳を後宮内へと入内させましたが…
董 林泉「陛下の寵愛をあのようなものが受けるなんてどうして納得出来ましょうや?」
黄 千住「無論にございます、絶対に許されるはずがありませんわ。」
馮琳の前に立ちはだかったのは…董 林泉と黄 千住という後宮の中でも絶大な力を持っている言わばボス的立ち位置にいる女性達でございました。
馮琳「…ごめんなさい…」
後宮と呼ばれる場所は、
総じて泥沼状態でございます。
何故ならば袁術に見捨てられれば
女性達の暮らしは格段に下がるので
ございます。
そのため新参者には厳しい厳しい
嫉妬の嵐が吹き荒ぶのでございます。
馮琳「…」
馮琳が後宮に入内して1週間後の
西暦197年05月22日のこと。
袁術から貰った蜂蜜色?の着物が
ビリビリに破られておりました…。
馮琳「陛下に対してどのように申し開きすれば良いのでしょうか?」
自分の意見など何一つ持たない馮琳は、
まさかの後宮にいる袁術の側室達に
意見を求めてしまったのでございます。
黄 千住「…陛下はいつも涙を流している心の優しい女性が大好きですから破れた着物をお持ちになられて嘆かれたら陛下はきっと許して下さるはずですわ…」
無論、董 林泉並びに黄 千住に付き従っている家来のような立ち位置である数多の側室達の誰かが彼女たちからの命を受けした事であるのは火を見るより明らかではあるのですが馮琳は自分で物事を考えるのがとてつもなく苦手で純真無垢な女性でございますので…
馮琳「分かりました、
そのように致しますわ…。」
馮琳はその企みに全く気づかず
袁術が馮琳の元を尋ねた際、
袁術「馮琳、その着物は余が贈った蜂蜜色の着物ではないか?一体どうしてこんな事になったのだ?」
馮琳は黄 千住から言われた通り、
ビリビリに破られた蜂蜜色の着物を
抱えながらただ何も言わず涙を流す
ばかりでございました。
袁術「泣かずとも良い。そうか…
しばらく余の訪れがなかった為
寂しくて仕方なく破ってしまったのか…」
袁術は馮琳に逢いたくて仕方ありませんでしたが部下の紀霊から窘められていました。
紀霊「皇帝陛下なのですから少しは慎みをお持ちにならなくてはなりませぬ…」
袁術「ぐぬぬ…」
こうして1週間我慢したのですが
これ以上は無理だったようで袁術は
馮琳の元へと急ぎ駆けつけたところ
馮琳の為にと仕立てて侍女に届けさせた
蜂蜜色の着物は見るも無惨な姿となって
いたのでございます。
真相は闇の中ではございますが…
この事により袁術は尚更馮琳を寵愛する
ようになってそれからは毎日のように馮琳の局へと通うようになっていました。
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