1 孤児そして疑似家族

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1 孤児そして疑似家族

 アナトリア王国の王都アナトゥスの外れの森で、深夜の獣道を急ぐ3人の姿があった。  体躯の良い男が鉈で張り出した枝などを払い先頭を進み、その後ろを長身でローブをまとった男が少年の手を引きながら、そして周囲を警戒しながら、付いて進んでいる。  今宵は満月。  時折、木の枝の隙間から月光が差し込み、その光が容赦なく少年のプラチナブロンドを照らす。月明りであっても、少年の高貴な出自の証であるプラチナブロンドは輝きを放つ。普段であれば優美な顔立ちも、泣きはらした後で瞼は腫れ、頬と顎には涙の後に泥やほこりが付いて乾いてひどく汚れていた。  とその時、長身の男は左目の端に人影を見たような気がした。 (まさか)  男は追手かと怯んだ瞬間、先頭の男の背にぶつかった。先頭の男が立ち止まったのだ。 「どうした?」  長身の男が囁くと、「しっ」と先頭の男が言い、警戒するように周りを睨んでいる。次の瞬間、金気を含んだ生臭い匂いがした。血の匂いだ。
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