第1話 一万円男

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第1話 一万円男

世の中がコロナから回復基調にあり、人手不足も重なって、今年の就職は売り手市場!、とテレビでは言っていた・・・。 いや、実際にそうなんだろう。仲間の学生は次々と内定(今の時期は内々定だけど)が決まって来ている。大学で集まる度に誰がどこに内定した、と話題になっている。 希望の企業に決まった者は、明るい顔をして残りの学生生活を謳歌しようと構えている。より条件の良い会社を目指している者は、仲間と情報交換をしながら、就活を続けているが、取りあえず内定を貰っているので、どこか気楽そうに見える。 「美穂は、どことどこに内定したの?」ゼミの仲間が訊いてくる。 実は私はどこにも受かっていない。仕方なく「まだ、どこも決まっていないの・・・・」と言う。 そう話すとと、みんなが意外そうな顔をして、でも、直ぐに納得して「美穂、優秀だから大手しか狙ってないんでしょう? 今、内定貰っちゃったら、断るの大変だものね」と言う。 私が大手企業だけを狙って、それ以外の企業にアプローチしていないと思っている。 大学受験の時に、自信があるので本命一本にしぼり、滑り止めを受けない、そんな感覚なのだろう。
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