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そして運命は回りだす
その日、リディ・ラングレンはテーブルの上に乗った一枚のタロットカードを見て首を傾げていた。
「運命の輪?」
リディは毎朝出勤前に一日の運勢をタロットカードで占う。といっても簡単なもので、大アルカナ二十二枚のカードから一枚引くのだ。
そして今日出た結果が『運命の輪』であった。
これの意味するところは恋愛なら運命の出会い、他にも幸運や好転といった意味がある。
だがどれも心当たりがない。
(電撃的に恋に落ちるとか?ふっ…ありえないわ)
自分の思考を思わず鼻で笑ってしまう。
2年前の間いきなり婚約破棄されて、もう愛だの恋だのはこりごりだ。
それに婚約破棄されたご令嬢を引き取ってくれる男性はいないだろう。
好転というならば、収入が増えてこの家を出られる…とかの方がまだ現実的だ。
「でもタロットが示してるんだから…なんにもないってことはないだろうけど」
うーんとカードを見つめつつ、そう独り言を呟いたが、今考えても仕方ない。頭の隅にでも置いておこうとリディは結論を出すと、急いで外出の準備を始めた。
予約のお客様を待たせるわけにはいかない。
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