その7・腹が減っては戦ができぬ

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 私が店の前に辿り着くと、佐藤はもう来ていた。ぼんやり空を仰いでいる。 「ひさしぶり」 「うん」  佐藤の返答はそっけない。そのまま店内に入る。 「何食べたい?」 「……牛丼アタマの大盛り」  あの時、佐藤はシンプルな並盛を頼んだはず、そう思いながら向き直る。 「広瀬が、旨そうに食ってたから、俺も食いたくなった」  私の疑問を察したかのように淡々と言われた。 「わかった。牛丼アタマの大盛り、二つ頼もう」  席に着く。カウンターなので、お互い顔は前を向いたままだ。 「最近あんまり見かけなかったけど、元気にしてた?」 「うん、まあ、ぼちぼち」 「何か変わったことあった?」 「いや、特には」  佐藤に会話を続けようという意思があまり感じられない。一緒に過ごしていた頃は、何話せばいいかなんて考えたことなかったのに。  今、二人の間には、ただ、沈黙が重くのしかかっている。
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