その1・禍福は糾える縄の如し

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その1・禍福は糾える縄の如し

 厄日とは、今日のような日のことを言うのだろう。  朝起きたらひどい寝癖だわ、急いでドライヤーかけたらいきなり壊れるわ、うっかり電子レンジも一緒に使っちゃっててブレーカー落ちるわ、ブレーカー戻してもレンジは息を吹き返さずそのままご臨終だわ、やむを得ずひさびさに使ったヘアアイロンは女子力の低下からかうまく使いこなせないし、蛍光灯はなんだかチラチラしてるし、冷蔵庫からもあんまり調子よくなさそうな嫌な音してるけど、給料日が二週間先でさすがにまだ買えない。  壊れる時って、なんでこう、一気に壊れるんだ。というか、嫌なことってなんで重なるんだろう。そんな風に思いながらドアを開けたところで、なんの前触れもなくパンプスのヒールが折れた。イマイチ安定悪いなとは思ってたけど、まだ二、三回しか履いてないのに。妥協して安いの買ったせいで、とんだ銭失いだ。当然のようにストッキングも破れてる。勘弁。  幸い今はさほど忙しくない。そして今日は金曜。仕事終わったら憂さ晴らしがてらDVDレンタルして、牛丼アタマの大盛り持ち帰って、自堕落に過ごしてやるんだ! そして、気を取り直して明日いろいろ買いに行くんだ! そう決めていたのに。 「なんでそんな、ささやかな願いも、叶わないんだよう……」  不本意な残業中、現実逃避したくなって、思わずつぶやく。
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