1. 教師の道

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1. 教師の道

 疲れていた。  僕は小学校に勤務して二年目の新米教師だ。  担任をしている四年二組の子供達は可愛い。だから、休み時間は子供と校庭に出て相手をしたい。けれども雑務が多すぎて、それが叶わない。  授業の準備、テストの採点、連絡帳への返事、保護者に配布するプリントの作成、研究発表会の資料作りと仕事は山積みだ。  子供と触れ合い、子供の成長を支える仕事をしたくて教師になったはずなのに、何をしているんだろうと思うことがある。  遅くまで残業し、一人暮らしのアパートに帰ってコンビニ弁当を食べ、また仕事の続きをやり、寝るだけの生活。飲みに誘われても、行く体力がない。コンビニで弁当を選ぶのが唯一の楽しみだ。  その上、最近よく眠れない。  すぐ近くを人が歩いているような喧噪が常に頭の中にあって、寝ても眠りが浅い。  一度など、目が覚めたら、人の足、膝から下だけのたくさんの足がベッドの横を行き来するのが見えた。錯覚だと言い聞かせて、慌てて布団に潜り込んだ。余程疲れていたんだろう。  朝の目覚めも悪く疲れは溜まる一方で、日々やらなければならないことをやるだけ。教師の道についた時の情熱が、どこかへ行ってしまいそうだ。
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