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「本当に迷惑じゃなかったですか?」
困り顔であきとさんがそう言うので、私は大げさに両手を振って否定した。
「そ、そんな事ありませんよ。そんな事より打ち合わせを」
気持ちを悟られないように改めて画像をタブレットに表示させながら、私は現場説明を始めた。でもそれ以外特に話すことはなく、だんだんと緊張が解かれていった私たちはどちらともなく雑談へと移行していった。
そこで分かったのは、お互いに血液型がO型なこと、お互いにまだ独身なこと、あきとさんの出身地が隣県で、大学に進学してからこの街に愛着を感じて住み着いたということ。そしてなにより驚いたのはあきとさんが私と同い年だったってことだ。私はてっきり三十代前半だとばかり思っていたので、これは少し嬉しい情報だった。年が同じなら、少しは期待してもいいかな、なんて思ったりして。
だんだんと打ち解けてきて話に夢中になっていると、まさみさんが冷ややかな声を浴びせてきた。
「ゆきこさん、もう五時過ぎてるわよ」
慌てて顔を上げると、時計の針は十七時十五分を指していた。
「ごめんなさい、私ったら」
「い、いえ、気を付けてお帰り下さい」
まさみさんに指摘されたのに、あきとさんに謝る私と私に答えるあきとさんに、まさみさんはあきれたような視線を投げた。でも、その顔は少し弛緩しているようにも見えた。
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