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僕は、たまに公園を歩く。
そして石を見つける。
土の中に埋まっている石。少しだけ覗いているソレ。
ソレを掘り起こすのが好きな僕。だから僕は、今日も石を掘るため公園に行く。
「あっちーなぁ」
季節は夏。セミが鳴いている。遠くの方へ目をやれば、蜃気楼が見えるほどだ。時間は14時と、一日の中で一番暑い時間帯。
わざわざ熱中症になりに来ました、と言うバカが来ない限り、公園はもぬけの殻だ。
「というバカが、実は僕なんだけどね」
ザッザッと、家庭菜園などで使うスコップを使いこなす。どの角度で土に突っ込めば、どれほどエグれるか。それを計算した僕のスコップ運び。
残念ながら、その特技をどこかで披露することも、ましてや自慢げに語ることは今後一切ないだろう。だけど一見地味に見えるこの特技が、僕にとっては病みつきなんだ。
「やっぱり……!
この石は、とんでもなく大きいぞ!!」
僕が暑い時間帯に、わざわざ公園に来た理由。それは、人がいない時間を狙った故だ。僕には、以前危うく通報されかけた苦い過去がある。
よく考えれば、公園で土を掘り返すなんて、不審者だ。だって、絶対変でしょ。土を掘って石を取りだして、ニヤニヤしてるなんて。そんな僕を見た人が「不審者だ」と思いスマホを取り出すのは、仕方ない事だ。
でも土を掘り始めると、無我夢中でやっちゃうからさ。中毒みたいなもんで、止まらないんだよ。「あとちょっと」って、何度自分に言っても効きやしない。
あー、人目を気にするのも面倒だ
集中して掘りたいんだよ、僕は
そう考えた時に、夏の暑い時間帯を狙えばいんじゃないかって。そう思ったんだ。
完璧に、理性が欲に負けた行動。
僕は、夏の暑さを――舐めていた。
「あれ、なんか、目が回って……」
グワングワンという表現が、しっくり来た。その後、僕は日光により熱された土の上に、ドサリと倒れる。
「あっ……っつ……」
なんちゅー暑さだ。僕の肌が焼けてしまう。墓じゃなくて、公園の土に還ってしまう。もう絶対、やばいよ死んじゃうよってくらいの暑さ。
それは、大袈裟なんかじゃなかった。その証拠に、僕の目は上を向き始める。
(あ、もう、意識が……)
ほぼ白目になり意識を保つのも限界を迎え、瞼がゆっくり降りていく。えー、つまんねぇ人生だな。こんなとこで僕は死ぬの?
(こんなことなら、もっと、)
と寄せては返す後悔が、僕を襲っていた。
その時だった。
バシャッ
「ぶぁ、ぶ!?」
人生を回顧していたら、いきなり水をぶっかけられた。しかも大量に。頭のてっぺんから頭の爪先まで、グッショリのビッシャりだ。
だけど、助かった。水の衝撃がなければ、僕は絶対に意識を失っていた。どうやら、公園で死ぬ運命は免れたらしい。
(けど、一体誰が……)
倒れた体を起こすのは面倒なので、目だけをキョロキョロ動かす。すると僕のすぐ隣に、短パンを履いた女の子が座っている。女の子が被っている大きな麦わら帽子には、ワンポイントとして、ひまわりのコサージュがついていた。あぁ、すげー夏っぽい。
「あなた、何してんの?」
「……穴、掘ってた」
「暑さで頭がやられた?」
「残念ながら……穴を掘るのは、もともとの趣味で……」
そう言うと、女の子はキョトンとした顔をした。だけど、すぐに「ブハッ」と吹き出して笑う。
「変な人!穴なんて掘ってどうするの?モグラじゃあるまいし」
「どんな石が埋まってるかなって……気になっちゃって……」
「ふーん?じゃあ、貸して」
貸して――と言って、女の子は僕が持っていたスコップを半ば無理やり攫って行く。
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