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「あれ、みんなは?」
「えっと、煙草と、おトイレと〜……あと電話?そうだ、電話に出かけたことにしておきました」
「なんだそれ」
笑いながら元の席に座ると、リラックスするように少しだけ足を崩す。そして斜め前に座る佐藤さんに体を向けた。佐藤さんとはよく部署飲みしていて、気軽に話せる関係になっている。
「でもさ、佐藤さんも随分仕事に慣れたよねぇ。覚えるのが早くて勉強熱心で……新人研修する側としても嬉しいし、本当に仕事仲間として頼もしいよ、ほんと」
「そんな〜もう、先輩が優しく丁寧に教えてくれているからですよ〜」
「なんか含みあるな!」
佐藤さんは少し戯けたように返してきたため、僕は肩を揺らして笑う。
「いやいや本当に佐藤さんが頑張ってるからだよ。僕だけじゃない。みんな言ってるんだから。もう独り立ちしちゃうかもね、なんて」
「そんなぁ、私もこの星のことはまだ分からないことばかりなので、これからもよろしくお願いします」
うん、と頷いてから僕は首を傾げる。ん?この星のことは?前を見ると佐藤さんはじっと僕のことを見つめていた。
「だからもう少し行動を控えめにしていただけると助かります。基本的には傍観してますけど今回はかな〜りギリギリです。今までは私が何とかカバーできましたけど、先輩はもう処分されるギリギリだったんですよ〜本当に」
そう言いながら佐藤さんは、からあげを口に放り込んだ。
「あなた方が比較的自由にできているのも、遥か昔から証拠を消してきた私たちのような存在の功績でもあるんです。褒めて欲しいわけではありませんが、そこは分かって頂きたいですね。それに仕事ですけど、私一応ここが気に入っているんですよ。だからできる限り秩序を保ちたいんです。好き勝手されると腹も立ちます。一緒にここに来た連れ合いは星に戻るらしいですが、私はここが好きなので残ると言いました。だってせっかく就職したのに、ついてきてとか言われても『は?』ってなりませんか?全く理解できませんよね。私を付属品だとでも思っているのでしょうか〜?」
佐藤さんはぐいっと酒を飲み干す。
「ですので、ご自分の行動を省みつつ、これからも変わらず後輩としてご指導ご鞭撻お願いしますね。私、本当に富良戸先輩のことは信頼してるし尊敬してるんです。ですから園村さんとちゃんと話し合って、仲良くやって欲しいと思っています」
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