人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

あなたのために

もう一度瞼を閉じたものの、眠れる気配はない。眠ろうと思っても眠れないと本で目にしたことがあるため、ヴァイオレットはベッドから起きて窓の方へと歩く。歩きながら考えていたのは、シャーデンフロイデのことだった。

（謎の女性の声の正体を、イザベル様は「知らない」と言った。イザベル様の使用人は、シャーデンフロイデの近くに女性を見なかった。でも街の人たちは女性の声を聞いている……。一体どういうことなのかしら？）

閉められたカーテンをゆっくりとヴァイオレットは開ける。大きな月が白い光を放っている。

「綺麗……」

ヴァイオレットが呟いたその時だった。庭を黒い影が動いているのを発見する。一瞬ヴァイオレットは野生動物が迷い込んだのかと身構えたものの、その正体はすぐにわかった。刹那、ヴァイオレットの頰は赤く染まり、彼女はネグリジェのまま部屋を飛び出す。

ベッドでの生活が長かったせいか、廊下を少し走っただけで息が切れてしまう。しかし、ヴァイオレットは足を止めなかった。玄関の扉を開け、庭へと走る。

「イヴァン様！！」