-機械仕掛けのイヴ-編 プロローグ 7

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-機械仕掛けのイヴ-編 プロローグ 7

(7) 映像が始まる。 時は夕方。 日が暮れかかっている。 奥には焼却炉と駐輪場が並んでいる。 戦前から施設なので ところどころ傷みがひどい。 学校の校舎裏の様だ。 リンゴはゴミ捨てを終わり、歩いている。 校舎の壁が切れた所で 例の男が3人の不良らしき男に 囲まれているのを発見する。 不良は不良らしくそれぞれ 制服をくずして着こなしている。 髪型も攻撃的だ。 男は殴られたのか傷だらけだった。 学生服も泥だらけだ。 左袖からは手が出ていない。 先の戦争で失ったのか。 背はそんなに高くなく、 リンゴと同じくらいだ。 体も細めで強そうではない。 目にかかるくらいの黒髪の間から 意思強く不良たちを見据えている。 その後ろには傷ついた犬が横たわって 両脚を縛られている。 おそらく不良たちがいじめていた犬を この男が助けたのであろう。 なんとか抗うが 不良たちの方が多勢な上に体格も大きい。 男の事を笑ってさらに殴ろうとする。 男が何かを叫んだ瞬間、 リンゴは校舎の裏から歩き出る。 何か声をかけたようで 不良たちと男がこちらを向く。 不良たちはリンゴの姿を見ると 良いものを見つけたとばかりに ニヤニヤとこちらへ寄って来る。 が、その後は一瞬であった。 リンゴの平手打ち3発で 不良たちは崩れ落ちた。 それを見て気が抜けたのか 男は膝をついて倒れかける。 リンゴは 駆け寄り抱きとめる。 男は犬の方を指さす。 犬の方を先に助けてやってくれ とでも言っているのだろうか。 その顔を見ると 血だらけではにかんだ笑顔だ。 一瞬、リンゴの動きは止まり、 システムはフリーズする。 再始動するのに多少の時間を要した。 リンゴは 犬の縄をほどき解放してやると 走って逃げて行く。 次に男の方を見ると立ち上がっていた。 口に人差し指をあてて、 秘密にしてほしい意味の ポーズをしている。 リンゴが頷くと、 男ははにかんだ笑いを浮かべて帰って行く。 リンゴの視界には 男の後ろ姿がしばらく映り続けている。 映像終わり。 本来なら正体が悟られるかもしれない こんな行為はせずに見逃すか 大きな声を上げるだけでも 良かったであろう。 リンゴが何を思ったのかは 別のデータを検証しなければならない。 人間を真似てみたかった… のだろうか。
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