僕と彼女は共犯だった【試し読み】

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「僕にはわからない……健介はどう思う?」 「何が?ほんとに自殺かどうかってこと?それとも遺書のこと?」 僕はトクトクと早くなっていく鼓動を押さえつけながら健介へと言葉を吐き出した。 「……両方だよ」 思ったよりも低く掠れた声になった。 健介もいつものふざけた顔から真顔になる。僕は『みんなの掲示板』に掲載された一週間前の莉緒の遺書とされる便箋の画像をスマホに浮かべた。 「大夢、それわざわざ写メしてたんだな」 「あ、うん……」 莉緒の遺書とされる手紙は、莉緒の自殺の翌日掲載されてすぐに学校関係者の何者かによって削除されてしまい、今は閲覧することが出来ない。 「アップしたヤツもわかんねぇけどさ、削除したヤツと同一かな?」 「どうだろう……わざわざ遺書をアップするくらいだから、アップした人と削除した人は違う気がするけど」 「成程な、てゆうかそもそも遺書をアップしたのって誰だろうな。『みんなの掲示板』の投稿予約機能で東山本人がアップしたっていう人もいれば、遺体の第一発見者だっていうヤツもいるしさ」 「SNSってそこがこわいよね。結局匿名っていう隠れ蓑で誰でもその人に成りすますことができるから……真実は闇の中だよ」 ぼそりとつぶやいた僕の言葉に健介が「成りすましねぇ」と気のない返事をした。 「結局、窃盗犯も捕まってねぇしな」 健介の言葉に僕は首を縦に振った。 僕ら莉緒の同級生としては莉緒の自殺だけでもショッキングな話だったが、莉緒の遺書とされる『盗ってごめんなさい』という文言に、その頃頻発していた校内窃盗事件が重なって学校内外から、莉緒の死と窃盗事件への関与に対して説明を求める声が多く挙がった。 ただ結局、莉緒が犯人だったという証拠は何もなく、未だに校内窃盗事件と莉緒の死が関係しているのかも、莉緒がそもそも犯人なのかも何も分かっていない。
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