僕の歩いた街の風景

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 たまに、二人で会って食事をする女性はいたが、食べ物や芸能人、洋服やレジャーの話ばかりで、僕の知りたい愛の謎は解けず、誰ともすぐに会わなくなった。  映画のような恋なんて、もう自分の身には起こらないと諦めてみても、その空虚さは少しも埋まらなかった。  やがて僕は帰郷した。  唯物的な空気の都市部から離れたら、僕は真実に目覚めるかもしれないといった期待も込めて。  が、田舎町は眠たげなだけで、シンプルな暮らしが僕に真実に当たるものをもたらすことはなかった。
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