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 今日は週に二度ある七時間授業の日で、しかも最後は大嫌いな倫理の授業。すっかり疲弊してしまったので、こんな日はさっさと帰ろうと傘置き場で自分の傘を探した。   赤い花柄の北欧風なデザインのもので、雨の日でも気分をあげたくて奮発して買ったお気に入りなのだが、見つからない。  他の学年の傘立ても隅々探してみたが、それでも見つからなかった。  傘もない、雨はやみそうにもない、前髪はうねってる…  気分はさらにどん底の底だ。  「華乃、私の傘使いな?私は充希(みつき)に入れてもらうから…」  凪咲がそう言って、紺色と白のツートンの大人びた傘を貸してくれた。  そして、「また明日ね」と彼氏の充希くんと雨の中を楽しげに帰って行った。  おのれ…リア充め…  たくさん励ましてくれて、傘まで貸してくれて、凪咲には感謝しかないはずなのだが、素直な気持ちでそれを受け入れることができない自分がいる。  そして、こんな自分が嫌で嫌でたまらない。  いつまでもこんなジメジメした気持ちでいたくないのに…  親友の幸せを妬むなんてことしたくないのに…
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