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クラスの人気者×言えない真実
「…新堂、お前、魔法使えるか?」
翌朝。下駄箱で靴を履き替える新堂に、オレは尋ねる。
「…え?何?」
キョトンとした顔で、彼はオレを見た。
「いや…やっぱり何でもない」
言いながら、心の中でオレは頭を抱える。
完全に予想外だ。まさか、新堂と安村さんが好き同士ではなかったなんて。
「水野?どうしたんだ?」
「いや、安村さんがさ…」
ダメだ。「彼女は二次元の男にしか興味がない」なんて言ったら、新堂、ショックで魂が抜けて、そのまま天に召されそうじゃないか。そんな事になったら一生夢に見る。
「いや、えっと…」
ごめん、とオレは胸の前で両手を合わせる。
「安村さん、やっぱりデート名人目指してるみたいだ」
新堂が好きで付き合いたいってわけじゃないなら、彼女は本当にただ「デート名人」とやらになりたいだけなのだろう。
「…だよな」
明らかに落胆した声。それでも新堂はオレに笑みを向けた。
「…けどさ、水野。大丈夫だから。俺、もっと頑張るから。いつか安村さんに、頼れる男だって思ってもらえるように。そんなに簡単に彼女を諦めるつもりはないから」
彼には珍しく、きっぱりとそう言い切る新堂にオレの胸は激しく痛む。
「…そっか、頑張れよ」
バシンと彼の背中を叩きながら、オレは決意を固めた。
知られるわけにはいかない。
新堂には、絶対に。
安村さんが「現実の男にはときめかない」だなんて。
並んで教室に入ると、何故か同じクラスの三井がぎょっとした顔で俺たちを見つめた。
本当の気持ち編 完
次章、えっちゃんからのプレゼント編へ♡
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