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これ以上はしないと心に誓ってはいたが、実際腕の中に彼女の温もりを感じると我慢も簡単に限界に近づく。
それでもえまを傍に感じていたいからキスをした後ぐったりとした彼女を寝室へ連れていく。まだ彼女の唇の周りは唾液で濡れていた。
この時にはアルコールもあってか既に意識は夢の中のようだった。仕事の時はほぼ笑うことなく緊張感を常に纏っている彼女の隙のあるこんな表情を見られるのが自分だけであってほしいと思う。
俺だけが知っていてほしいと思った。
「好きだよ、えま」
肌理の細かい頬を撫でそう言った。
えまは穏やかに笑っていた。
眠っている彼女にしか言えないこの現状がもどかしい。えまに想いを伝えてしまえば、彼女はきっと迷惑だと思うだろう。えまは以前話していた。
『私と亜希さんに何か噂が立てば…私はクビになるので』
そんな話を聞いたことは一度もないのだが、歴代のマネージャーがストーカーになったり仕事に支障をきたすことがあったからそういう方針にしたのかもしれない。
(俺には直接そういう話は通っていない)
「はぁ…、」
華奢な肩を包み込むようにして抱きしめる。腕の中で眠るえまを抱きしめながら眠った。
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