【4P】見知らぬ花嫁

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「お、岡林さん…!」 岡林は、花嫁の体を抱きかかえ、車椅子に座らせた。 「あと少しだったのに…」 そう言って、岡林は涙を拭った。 「あんなに楽しみにしてたのに…昨夜、こいつは突然逝っちまったんだ。」 僕の思った通り、花嫁は死んでいた。 僕らは、亡くなった美津子さんを車に乗せ、岡林の家に戻った。 そこで、僕は今回のおかしな結婚式についての話を聞いた。 「こいつは、本当に可哀想な奴なんだ。 子供の頃からずっと病気ばっかりでな。」 横たわる美津子さんを見る岡林の視線は、優しさに溢れたものだった。 「どうにかこうにかここまで生き抜いてくれたんだが、最近はどうにも具合が悪くてな。 気持ちも弱ってたのか、あいつ…俺に言ったんだ。 人並みに結婚してみたかったってな。 でも、あいつはいつ死ぬかもわからない体だ。 そんな奴と結婚してくれるとしたら、そりゃあ金に目が眩んだ奴だけだ。 それでも良いかと思ったりもしたが、やっぱり悩んだ。 それで、あんたにこの話を持ち掛けた。」 「どうして僕を?」 「あんたは、誠実だからだ。 毎月欠かさず、利子を払ってくれた。 俺に悪態を吐くこともなかったし、ママも良い人だって言っていた。 少なくとも俺の知る人間の中では、一番マシだったんだ。」 「そうでしたか……」 冷淡な面しか知らなかった岡林も、身内には違ったのだとどこか意外な気がした。 「約束通り、これであんたは自由だ。」 「ありがとうございます。」 * (あれからもう三年経ったんだね。早いもんだね。) 僕は、墓の前で手を合わせた。 人生は何が起きるか、本当にわからない。 あの結婚以来、僕の生活は一変した。 美津子さんが死んで半年後に、岡林が急病で呆気なく亡くなった。 それには驚いたが、もっと驚いたのは、岡林が資産を全部僕に託すと遺してくれた事だ。 そのお陰で僕は、働かなくても済む豊かな生活を手に入れた。 (また来るね…) 僕は岡林家の墓に向かって心の中で呟いた。
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