48人が本棚に入れています
本棚に追加
/78ページ
1 Sion
4月に高校に入学してすぐ、羽村と連絡先を交換した。
羽村はオレと同じ機種、同じ色のスマホを持ってて、なんとカバーまでおんなじだった。
それがなんか嬉しくて
羽村といるのが楽しくて、ずっと喋っていたくて、もっと側に寄りたくて、自分でも気付かないうちに大好きになってた。
そして、奇跡が起こった。
11月、2学期の期末テストの発表の日。
オレは羽村とキスをした
「テスト終了ー!いえーい!」
期末テスト最終日の最後の科目が終わって、チャイムが鳴ったところで三田が伸びをしながら言った。周りも三田に合わせて拍手したりハイタッチしたりしてる。
みんなニコニコ。笑顔、笑顔、笑顔。
うん。テスト終わって嬉しい、よね。
でもオレはちょっと悲しい。
羽村とテスト勉強するのが、すっごく楽しかったから。
テスト発表の日以外はずっと、羽村と三田と中島とオレの4人だったけど。
中島が「行くぞー」って言うから、そっかーって思いながら付いて行った。
ファミレスとかファストフードの4人掛けの席で、羽村と隣同士で座って勉強した。解んないところがあるふりをして、羽村に身体を寄せてテーブルの下で時々指を絡めた。
羽村の手、おっきかった。
あ
羽村と中島、ベランダに出てった。2人で。
なんで?
「どーした、佐伯。ぶすっとして。今日からまたカッケー羽村が見られるぞ?」
三田がにーっと笑いながらオレを覗き込んで言う。
カッケー羽村…っ
顔がぶわっと熱くなっていく感じがして、慌てて三田から顔を逸らした。
「学食開くし、おれも昼飯食って帰ろっかなー。佐伯、学食行くんだろ?」
「…うん」
机に肘を突いて、両手で隠すように顔を覆った。手のひらに頬の熱を感じる。チャイムが鳴って三田がオレの席を離れ、羽村と中島がベランダから教室に入ってきた。
なんで、寒いのにわざわざベランダに出てたんだろ。
羽村がオレの席の横を通っていく。目線だけ上げて羽村を見たら、羽村がオレの肩をぽんって叩いていった。
胸がドキンと鳴って、息が止まった。
羽村が触れていった右肩を左手で包んで振り返る。席に着いた羽村がオレの視線に気付いて微笑んだ。
わ…
なんか…どうしよ
めちゃくちゃ幸せだ
ただ、肩を叩かれて目が合っただけ
それだけなのに…
うちの担任の席替えルールでは「背の高い者は後方」と決まっていて、だから羽村はいつもオレより後ろの席で、授業中に姿を見ることができない。
別に座高が高いわけじゃないし前だっていいと思うのに、先生は謎ルールをやめてくれない。
だから授業中は羽村を見られない。
後ろにも目が欲しい。
手のひらとかでもいいな。後ろに向けて羽村を見るの。
なんてバカなことを考えてる間にホームルームは終わってた。
最初のコメントを投稿しよう!