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その後、十分ほどしてから井上が迎えに来た。
優羽は車に乗り込み、二人は新穂高へと向かった。
車の中で、井上は言った。
「僕の予想なんですが、午後から少し天気が回復しそうな時間があるんですよ。岳大さんはその隙を狙って下山するんじゃないかな? まあ、僕の勘なので外れるかもしれないですが」
「体調が悪い人がいるのでしょう? その人、動けるのかしら?」
「うん、おそらく高山病じゃないかなあと思いますよ。昨日今日とテントで休んでいたのなら、だいぶ体調は回復しているんじゃないかな? ヘリの救助要請が来ていないって事は、そういう事なんだと思いますよ」
「それなら良かった。じゃあ、早ければ今日中に?」
「うん、僕はそう思いますよ。だからこうして迎えに向かっています」
井上は笑顔でそう言った。
井上の表情を見ていると、期待していいのだろうか?
優羽は少し明るい気持ちになった。
その頃岳大達は、空の様子を見ながら、天気が一時的に回復するだろうと睨んでいた。
岳大は小野達と話し合った結果、その隙に下山する事に決めた。
具合が悪くずっと寝ていた川田は起き上がれるようになり、
「すみません、ご迷惑をおかけしました。もう僕も歩いて下山できそうです」
と言ったので、三人はホッとしたと同時に、すぐにテントを撤収して下山の準備を始めた。
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