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第1章 - 1
「ママー! でんしゃ! でんしゃがいっぱいだねぇ!」
「本当! いっぱい停まっているね~! 流星は電車に乗るのは久しぶりね!」
「うん! ママ、でんしゃ、しゅごいねぇ!」
流星という名の小さな男の子は、次々にホームに入ってくる電車を見てとても興奮していた。
沢山の電車を見て嬉しそうなその子の傍らには、二十代と思われる母親が小さな手をしっかりと握り微笑みながら寄り添って立っていた。
彼女の名前は森村優羽、二十七歳。優羽は高校卒業後長野の地元で二年間働いた後、二十一歳の時に東京へ行き就職した。
東京ではアパレルショップの店員として働いていたが、六年経った今、訳あってシングルマザーとなっていた。
優羽は今日までずっと流星と二人で暮らしていたが、
東京での仕事を先週退職し地元長野の小さな町へと戻る事になった。
そして今、新宿駅で松本行きの列車を待っているところだ。
優羽は、嬉しそうに電車を眺めている息子の流星を見守りながら、
何気なく視線を駅の掲示板の方へ向けた。
するとそこであるものに目を奪われる。
それを見た瞬間、優羽の心は、驚きと共に小さな衝撃を受けていた。
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