思い出のオルゴール

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思い出のオルゴール

 耳にしたことがある音楽に、私は足を止めた。  題名は覚えてないが、懐かしい音楽。  ここで流れているのはオルゴール調で、あたしが聞いたことがあるのは確か、ピアノの音だった。  辺りを見回すと少し先に古びた洋館があった。  鬱蒼と茂る森の中に、三角屋根を突き出して、それはあった。  洋館に近づくと、音も大きくなる。  その洋館はとても大きかった。  特に目に入るのは蔦だろう。  元々は茶色であっただろう壁が、蔦一色。  たぶん、何十年もこのまま。誰も住んでいないのだろう。  あたしはぼーっと突っ立って洋館を見ていた。  だから暫く気づかなかった。洋館の立派な玄関の横の窓が開いて、おばあさんが覗いていたことに。  気付いたときには、心臓が飛び出るかと思った。  失礼ながら、幽霊かと思ったから。 「こんにちは」  そう言って、おばあさんは微笑んだ。  あたしも挨拶を返す。それと、同時に頭を下げた。 「こんにちは。……オルゴールの音が聞こえて探していたら敷地内に入ってしまって……。申し訳ありません」 「まあ。このオルゴールにつられて入ってきたのね。中に入って少し話し相手になってくださらない?足が悪くて動かないのよ。玄関を入ってすぐ右のドアの部屋にいるから」  あたしは頷いて、玄関を開ける。  扉はとても重く、少し動かすと、ギーと、音がなった。
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