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(今日の私…けっこういけてるんじゃない?)
お昼休み、誰もいないトイレで、私は鏡に向かって微笑んだ。
(やったわ。これできっともう大丈夫よ!)
私は今一度、手に持った手鏡をのぞきこんだ。
そこに映っているのは、いつもと変わらない私の顔…
ただ、その顔は期待に胸を躍らせ、弾けるような明るい笑顔を浮かべている。
*
(何やってんだか…私も相当馬鹿よね…)
最初は、もちろん本気なんかじゃなかった。
私は、もうおまじないを信じるような年じゃない。
でも、私はどうしても佐々木さんの恋人になりたかった。
つまり、藁にもすがりたい気分だったということだ。
入社してすぐの頃、私は佐々木さんに一目惚れした。
仕事が出来て、明るくて、笑顔がキュートで、優しくて…
そんな佐々木さんへの想いは募るばかりで…
佐々木さんのことを知れば知るほど、私は彼に惹かれていった。
幸いにも今は、佐々木さんはフリーみたいだけど、あんなに素敵な人なんだもの。
いつ恋人が出来るかわからない。
そんなことを考えたら、気持ちは焦っていくばかり。
まずは告白しよう…
そう思ったけれど、私みたいに地味な容姿で、これといって取り柄のない女を佐々木さんが相手にしてくれるだろうか?
美容院に行って髪の色を少し明るめにして、
化粧に使う色も服装も明るめのものに変えた。
それは、私にとってはかなり勇気のいることだったのだけど、周りの人は私の努力にさえ気付くこともなかった。
どうすれば良いんだろう?
どうすれば、佐々木さんに振り向いてもらえる?
毎日、私はそのことばかりを考え続けていた。
そんなある日、私は本屋でなにげなく手に取った雑誌の記事に目を留めた。
そこに書かれていたのは、恋人が出来るおまじない。
私はすかさずその雑誌を手に取って、レジに並んだ。
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