ワタシ ノ イバショ

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 肌を焼く蒸気のなかで視界が狭くなり,目の前がモノクロになると,頭が痛み,顔も焼けるように痛くてなり肌に滲みた。 「なんなんだよ……どうしよう……どうしたらいいんだろう……」  脱衣所の電気が眩しく,焼けるような蒸気が湯気を立ち込めすべてが真っ白に見えた。 「どうしたらいいのかわかんないよ……なんでこんなことになったのかわかんないよ……」  目の前でなにが起こっているのか理解できなかった。浴室の床に転がる肉の塊が美奈江だってことを頭では理解していたが身体が動かず,なにをしたらよいのかわからず震えながら黙って見ているしかできなかった。  真っ白な蒸気のなかで,壁の液晶パネルがチカチカと点滅した。  真っ黒い汁を鼻と口から垂らして泣きながら助けを求める美奈江の顔が何度も繰り返し頭の中でループし,モノクロの世界で何が起こっているのかわからず混乱した。 「なんなんだよ……なんなの……こんなの嘘だろ……? どうなってんだよ……」  液晶パネルがゆっくりと点滅すると,シャワーの音に混じって遠くから微かに聞こえる程度の冷たい機械音が鳴った。 ーーアイシテ ナンテ イワナイーー ーーワタシ ノ イバショーー ーーイバショ ガ ホシイノーー ーーダカラ オネガイーー  蒸気が脱衣所にまで広がると,腰を抜かして座り込んだ彼氏の身体を包み込んだ。 「怖いよ……なんなんだよ……怖い……怖いよ……どうなって……る……ん……だ……よ……」  真っ白な熱い蒸気が男を包み込むと肌が泡立ち,意識が朦朧とし,大きく口を開いた。  真っ赤に充血した目を見開くと,ポンっと軽い音を立てて眼球が飛び出し床に転がった。  そのままゆっくりと身体が倒れると頭を床に打ち付け,皮がめくれあがり,大きく開いた口から黒い液体が溢れ出した。  床に倒れた衝撃で顔の皮がめくれ筋肉が露出し,鼻と口から大量の黒い液体が床一面を黒く染めた。  液晶パネルがチカチカと点滅すると,画面の表示が薄くなり,シャワーの激しい音が浴室に響いた。 ーーネェ オネガイーー ーーワタシ 二 イッテーー ーーワタシダケ 二 イッテーー ーーコレカラモ ヨロシク ッテーー
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