モノリス

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 とある国の考古学調査隊が、調査の過程で巨大な石柱(モノリス)を発掘した。高さは二十メートルほど、断面は完璧な六角形で、漆黒の表面には縄を巻いたようにびっしりと細かな文字が刻まれているという。  石柱発見のニュースは、すぐに世界中に広がった。だが、多くの人はそれをフェイクだと考えた。古代の地層から出てきたにしては、あまりにも人工的すぎる。たちの悪いいたずら、あるいは発掘時の取り違えではないか? ついには調査隊をイカサマ師扱いする人まで現れて、石柱のニュースは下火になっていった。  一年後。学者たちは再び声明を発表した。石柱に刻まれた文書の一部を解読したというのだ。 「冒頭の一文は、『長大な死の記録』と読めます」  記者会見で、リーダーの言語学者が説明した。 「そこから先は、古代のある時点で起こった災害がひたすら列挙されていました。我々ははじめの数行から、六度の自然災害と、三度の疫病禍を読み取り……そのうちの一つについて発掘調査をした結果、実際に痕跡が発見されたのです」 「『石柱文書』は事実ということですか!」  石柱はまたもやニュースになった。イカサマが疑われる一方、今回は「世紀の大発見なのでは」と思う人も少なくない。議論の結果、外国の専門家をまじえた本格的な解読チームが発足し、定期的に結果を公表することになった。  地震。山火事。干ばつ。洪水。部族間の争い。その後も、世界のありとあらゆる場所で起こった死の記録が読み出される。いくつかの記録について証拠が見つかると、『石柱文書』の信ぴょう性を疑う人はいなくなった。 「けれど、誰が石柱を作ったのだろう?」 「神様が」 「宇宙人が」 「いやいや、超科学を持った古代人が」  もはやいたずらとは考えにくい。何か、より高次元の存在とでもいうべきものが、人類の発見にそなえて石柱を埋めたのではないか?  石柱への関心はますます高まる。人びとは解読結果を追いかけはじめた。
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