擦れ違う心

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

擦れ違う心

「メリッサ…私、最近、ずっと誰かに見られてるような気がするの。」 「今、あなたは神経が高ぶってるから、そんな風に感じるのよ。」 「そうかしら?」 「そうよ。」 メリッサは、シーマの背中を優しく叩いた。 「でも、フランクの亡骸だってまだ見つかってないし…もしかしたら…」 メリッサは、俯いて首を振る。 「シーマ…残念だけどフランクは死んだの。 生き返ることなんて絶対にないのよ。 万一、生き返ったとしたら、それは悪魔の仕業よ。 そんな怖ろしいこと、ないとは思うけど… じゃあ、私、そろそろ行くわね。」 「何日も泊まってくれて、どうもありがとう。」 メリッサは、シーマの家を後にした。 それを確認したフランクは、密かにシーマの家に近付き、扉を叩く。 「シーマ、開けてくれ! 僕だ、フランクだ!」 聞き馴染んだフランクの声に、シーマの体は震えた。 「シーマ、早くここを開けてくれ!」 シーマは、部屋の片隅にうずくまり、耳を塞いだ。 しかし、フランクは扉を叩くことを止めない。 (やっぱり悪魔が…悪魔がフランクを…) 怯えたシーマはついに立ち上がり、ゆっくりと扉を開いた。 「シーマ!ついに…うっ!」 フランクの顔から、不意に微笑みが消えた。 「わ、私は悪魔になんか惑わされないわ! 今すぐフランクの体から離れて!」 シーマの瞳からは大粒の涙が零れ、フランクの腹部からは赤い血が流れ出した。 「シ、シーマ……ぼ、僕は……」 フランクの言葉を遮るかのように、再び、シーマの持つナイフが、フランクの胸に深く沈んだ。 「誰か!神父様を…! 早く!悪魔が…悪魔が…!」 シーマの血を吐くような叫びに、フランクはその場にくずおれた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!