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Hey Honey!
秋の色に街中が染まりだした休日の午後、ご機嫌な証の鼻歌を歌いながらガラスで出来たチェスの駒を手に取ったのは、たった今ギュンター・ノルベルトに奇跡の勝利を果たしたリオンだった。
その横顔に呆れたように溜息を吐いたレオポルドは、そんなにギュンター・ノルベルトに勝てたことが嬉しいのかと問いかけ、連戦連敗中の相手に掛けた歓喜の雄叫びを上げるリオンに冷や水を浴びせるが、ささやかな喜びに水を差すなと言い返されて口を閉ざす。
「なー、オーヴェ、そうだよなぁ」
「まあ、そうだな」
何度やっても勝てなかった相手に勝てた感動は声を大にしても良いだろうと頷くウーヴェにリオンが更に勝ち誇った顔で頷き、ハニーの言うとおりだと拳を握ると途端に聞こえてきた言葉に表情が一変する。
「1ユーロ」
「……ぅ」
「何だ、ハニーと呼んだら1ユーロ払わせているのか、フェリクス?」
二人の間では久しぶりに当然のように交わされるその言葉に反応したのは、リオンに負けたことで内心かなり落ち込んでいたギュンター・ノルベルトで、どうしてそんな決まり事が出来たんだと気持ちを切り替えるように問いかける。
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