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「粕汁のお代わりはいらないか?」
「いる。」
「ごはんは?」
「いる。」
おばあさんの家には暖炉はないけど、ストーブとそして四角い台があった。
四角い台に足を突っ込むと、そこはとってもぽかぽかして気持ちが良いんだ。
おばあさんは粕汁というものを作ってくれたんだけど、それは見た目はシチューみたいなんだけど、味はかなり違ってて、食べるととっても身体が温まるんだ。
おいらとおばあさんはテレビを見ながらごはんを食べて、のんびりとイヴの夜を過ごした。
あぁ、良かった。
今年もどうにかみつからずに済みそうだ。
「はい、デザートのみかん。」
「ありがとう。」
「あんちゃん、おまえさん、仕事はしとらんのか?」
「してるよ。
荷物の配達。」
「そうか。
今日は仕事は休みなのか?」
「……うん。」
おいらは嘘を吐いた。
こんなによくしてくれるおばあさんに嘘を吐くのはいやだったけど、本当は、一年のうちで今日と明日だけが仕事で、その仕事がいやで脱走して来たなんて言えないもの。
「おばあさん、おいら、明日までここにいて良い?
お手伝いすることがあったら、なんでもするから……」
おばあさんはおいらの顔をじっとみつめて、やがてにっこり微笑んだ。
「……そうじゃな。
クリスマスを一人で過ごすのは寂しいものじゃからな。
明日は、ケーキでも買いに行こうか。」
「おいらはこれでいいよ。」
そう言いながら、おいらはさっきもらったみかんを口の中に放り込んだ。
おばあさんは、そんなおいらにまた優しく微笑んで……
おいらの心は、なんとなく温かくなった。
~fin~
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