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兵士は幻にキスをしない
「これからもよろしくお願いしますね!」
俺がそう言われる時、基本的には賞賛とセットである。
つまり俺が戦場で活躍して、その戦果を称えられた時だ。
「ローレンスさんのおかげで、今日もわが軍の被害が最小限で済みました!」
「真っ先に敵に突撃していったんですってね。なんて勇気のある方なんでしょう!」
「ローレンスさん、僕もローレンスさんみたいな兵士になりたい!」
「お、おれも!つ、強くなっていつか、母さんや弟を守るんだ……っ」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああローレンスさん万歳いいいいいいいいいいいいいい!我が国の英雄うううううううううううううううううううううううううう!」
「万歳!万歳!万歳!万歳!」
「これからも我が国は、ローレンスさんがいれば安心だな」
「なんせおひとりで千人分の活躍をされるからな……!」
「その通り!敵が何かを言うより前にばっさり!だ。軍刀一本で、あっという間に百人の敵を切り伏せるという……!」
「銃ではなく、剣で戦うっていうのがまたイカすんだわー」
「本当にかっこいいよね!」
「うんうん、憧れる!」
「ローレンス万歳!英雄万歳!」
「これからも我が国をよろしくお願いします、ローレンス様!」
戦場から帰ってきた俺を褒めたたえる人々の、同僚たちの声、声、声。
俺は凱旋パレードで手を振りながら、心の中で思いつ続けていた。
――ああ、俺は。いつまでこんなこと、続けるんだろうか。
誰も知らない。
俺が望んで兵士になったわけではないということを。
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