Kiss,kiss,kiss.〜another version〜

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「というか、何でここで寝るんだよ。 家に帰れよ、全く」 と、そう酔っ払いに言ったところで、 のれんに腕押しというものだ。 今日は、大学の卒業式。 天文サークルで一緒だった仲間との 打ち上げで、俺の親友である岸野葵は 飲めない酒を大量に飲んだ。 急性アルコール中毒で倒れられたらと 心配になったが、周りで取り押さえて 何とか会場から運んできた。 結局岸野はそのまま起きることなく、 千葉にある俺のひとり暮らしの部屋に 上げる羽目になった。 普段からよく泊まっているから、 岸野の私物は多く保管されている。 だから何がないからと困ることはないが。 俺が岸野を家に上げたくない理由、 それは岸野の寝ぼけ癖に他ならない。 寝入りは静か、いびきも歯軋りもない。 ただ、突然起き出したかと思うと、 俺に抱きついたり、キスをせがんだり するのだ。 岸野には大学入学当初から付き合っている 神代綾という同級生がいる。 彼女は岸野の 寝ぼけ癖を知っているのだろうか。 今夜もまたやって来るのかと思ったら、 気が気じゃない。 抱きつく?キスをせがむ? え、それくらい何てことないって? 違う、俺はずっと岸野に片想いを しているんだ。 確かにそれをされるのは嬉しいが、 神代綾に対しての罪悪感がある。 実は彼女は俺の従姉妹で、 見栄を張って岸野を紹介した手前、 悪いことはできない。 さて、今夜も無事に貞操を守れるか?
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