義翼の職人

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 空を見上げている。  重い灰色の雲に覆われた雷走る空を。  彼にとってそれは初めての経験であった。  彼にとって空は、常に同じ目線にあるものであり、見上げるようなものではなかったから。  それだけではない。  彼の背中は、今、大地を感じている。  固く、冷たく、ざらついた大地の感触を。  この世界が滅びたとしても決して感じることのない大地の感触を。  そして痛みだ。  身体中を襲いくる不快を通り越したあまりにも悍ましい感覚。  これが痛みと呼ばれるものであることに気づくのに数拍の時間を要した。  彼は、身体を起こす。その瞬間に言いようのない痛みが全身を駆け巡る。初めて経験する痛みがどのようにすれば治るのか皆目見当が付かない。  彼は、痛みの波が消えるのをじっと待ち続けた。  ようやく痛みが少し引いていったので彼は自分の置かれた状況を確認する。  彼の視界を覆うのは見渡す限りの荒れた大地であった。  乾いたてひび割れた土、剥き出しの岩、枯れて彫刻のようになった木々、そしてどこまでも広がる重い雲に覆われた暗い空・・・。  彼は、次に自分の身体を確認する。  両手、両足は無事だ。
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