第三十ニ章 Hide and seek 二

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 だが、街よりも、朽木の実家から鬼の場を剥がす事のほうが難しい。だからこれは、予行練習にもなるので、実施しておきたい。 「どうやって、場を封じるのですか?」 「準備が整ったら実行するから、まあ、見ていてよ。でも、朽木やハンザは、月森の杜に避難していたほうがいいかな…………間違って、鬼の場に追いやってしまいそうだ」  しかし、鬼殿がいないと、場が出現しない。だから、誰か一人は、出現する場に残っていなくてはならない。 「鬼殿か……………………」  鬼の方に行ってもいいという、鬼殿はいるだろうか。 「まあ、やり方はわかりました」 「分かったの???????俺、説明した????」  朽木の勘は凄まじい。  そして、鬼殿の役には、匠深がいいと言っていた。 「匠深は、すぐに捕まってしまいそうだけど…………」 「そこが問題ですよね……捕まえられない位置に最初からいればいいでしょうか……ハンザに考えて貰おう」  檻の中に、入れておくしかない。 「本当にやり方が分かったのか?」 「そうですね……俺は法律家になろうとしています。この世界にはルールがある。今、法律といえるものは、人が考えたものとされている。でも、本物のルールというのは、世界が存在するため、存続する為にある事だ」  だから、世界を守り継続させてゆくために、ルールを尊重する。 「どうも、水瀬には独自のルールがある。そして、それは世界の存続に関わっている重要なものだ。そして、この世界というのは生き物で、ルールも生き物に近い」  補正というものは、治癒に近い現象だと、朽木は考えていた。 「だから、世界に病巣を教え、切り離して治癒せと伝える」 「………………………………案外、分かっている????」  ニュアンス的には、合っている感じがする。そして、俺は竜王で、この世界の主なのだ。俺が、この界にとって不必要、もしくは有害とみなした事柄は、排除対象となる。 「…………それで朽木、匠深と別れる覚悟は出来たのか?」 「元々、俺は匠深が見えていませんでした。でも、存在しているだけで良かった」  元気で頑丈な鬼殿達は、インフルエンザに罹っても、骨を折っても、崖から落ちても、走り回って騒いでいた。 「…………多分、両親も匠深が生まれた時に分かっていたと思います。匠深は俺達とは違っていた。俺やハンザ、目羅兄弟は、とにかく賑やかで、うるさかった……兄の世代も、別の意味で賑やかだったし……」  朽木含む鬼殿達は、親達が旅館の送迎バスで遊園地に連れてゆくと、ジョットコースターに乗りまくり、更に幽霊屋敷では幽霊を撃退していたという。  そして鬼殿は、スポーツでも負けた事はなく、全国大会の常連でもあった。そのスポーツというのも、一つではなく複数だ。 「俺達は自分でも、人の枠を超えている事に気付いていた。でも、それを笑って見ていたのが、匠深だった」
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