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第三十三章 Hide and seek 三
家に帰ると、それぞれの日常に戻ったが、街の場を封じるという計画は進んでいた。そして、朽木は匠深に真実を伝えたらしい。そして、匠深は承諾した。
「朽木、匠深に何を話した?」
「鬼殿の役をして欲しいと頼んだ」
朽木は匠深が見えないが、媒体を使用すれば会話する事が出来る。つまりは、メールなどでは話す事が出来るのだ。
「それで、よく匠深が了解したな……」
俺は部屋の修理が終わったので、本格的に引っ越ししてきた。だが、器材がまだ揃っていないので、朽木の部屋で料理している事が多い。
今も、大量の肉を焼き、ハンバーグを二十人前くらい作った。そして、珍しく山盛りのサラダも用意した。
「水瀬のサラダは食べられる」
「ドレッシングも手作りだ」
そして、料理が終わると、自分の部屋に戻る。
「水瀬、泊っていって」
「嫌だ」
泊るも何も、俺の部屋は朽木の部屋の真上にある。
そして、自分の家に帰ると、そこには立哉が竜の姿で寛いでいた。
「立哉、帰れ」
「………………食事を作ってください。食べたら帰ります」
どうして、朽木も立哉も、俺に食事を作らせるのだろう。
だが、竜の姿をされると弱い。つい俺も、立哉に何か美味しいものを食べさせたくなってしまうのだ。
「俺、佃煮を作ってみた。おにぎりにするから、食べてみて」
貰った佃煮が美味しかったので、味を忘れない内に再現してみたのだ。
「それとさ、味噌を買ったから、味噌汁。和食もいいなと思って、ぬか床もやってみた。それで、漬物。メインは、ヤマメの燻製」
「美味しいです」
そして、俺も食事を始めると、立哉が土産だと言って、各地の野菜などを出してくれた。
「立哉、朽木が匠深に鬼殿の役を頼んでくれた。匠深がやってきたら、場の切り離しをするよ」
「月森さんと、場の調整をしておきます」
鬼の場が離れるというのは、鬼が行き来出来なくなるという事だ。その事を考えると、とても寂しい。
「しかし、朽木、俺の佳樹に料理をさせて…………」
「立哉もそうだろう」
このまま、立哉もここに住むと言いそうで怖い。
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