雨の日のナポリタン

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『危ない! 逃げろ』  降りしきる雨に混ざって聞こえる誰かの叫び声。大きな影が頭上に広がってきて、恐怖のあまり目をつぶる。  その瞬間、私は目を。そう、目をつぶろうとしていたのは夢の中で、恐怖から逃れようと現実世界に戻ってくるために目を開けたのだ。  重い体を起こしながら時計に目をやると、アラームが鳴る30分以上前だった。いつもならこのまま二度寝に入るところだけど、今日はそうもいかなかった。  左のこめかみあたりがズキズキと痛む。起き上がってカーテンを開けると雨が降っていた。 「梅雨入りしたんだっけ……」  ため息とともに吐き出した言葉に気分はより一層重くなる。  雨の日は嫌いだ。洗濯物は乾かないし、外を歩くと靴が濡れてしまう。そして何より、雨の日は決まって頭が痛くなる。  気象病、というらしい。気圧の低下により血管が膨張して起こる、調べた限りだとそんな感じらしいけど、よくは分かっていない。分かっているのは、雨が降ると体調を崩しやすくなるということ。  軽い吐き気がしたので、朝ご飯をあきらめて家を出た。よりにもよって大事な会議のある今日に限って頭痛が出るなんてついてない。……そんな事を思いながら家を出たけれど、今日は本当についてない日だった。
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