ナイフを握る女達

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 金曜日の夜、夫の脩二が明日は出かける事になったから一緒に映画館には行けないと言った。久々に夫婦で出かけられると思っていたのに、その態度はそっけなさ過ぎる。 「急用なの? そうじゃないなら、今度にしてよ」  私も普段なら食い下がったりしなかっただろう。 「悪いな。仕事関係の人に会う事になったんだ」 「そうなの? だったら初めから仕事だって言えばいいのに」 「……不機嫌になるなよ」 「だって」  明日は結婚記念日でしょう、と言おうとした時、脩二がずっと吸っていなかったタバコに火をつけた。 「ちょっと、どうしたのよ」  脩二は温厚な性格で、休みの日はゆっくり自宅で映画を見たり小説を読む。私は暇を見つけてはジムやプールで体を動かしたりするのが好きで、結婚前は一人旅もした。仕事で忙しい脩二に極力合わせて来たけど、それが二人で生きていく事だと思っていた。脩二だって、タバコが嫌いな私の為に一念発起で禁煙し、結婚してから三年は一度もタバコを吸っていなかったはずだ。 「悪い。仕事でトラブルがあって、ついな」 「……分かったわよ。来週は行けるよね?」
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