クリームシチュー

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 父は、クリームシチューだけは得意な人だった。  家でも、無口に「おう」や「そうか」しか言わない父の背中は僕には遠く感じていた。初めて、母の料理を手伝った時、父は嬉しそうに頬を綻ばせて僕の頭をガシガシと撫でた。  ずるいな、と思った。そんなことで今までの、家族への雑な態度が許されるかよ、と思った。それでも、父の背中は俺には憧れそのものだった。陸上部に入ったのだって、少しでも近づきたいから。なのに、僕は憧れを捨てた。
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