このくだらなくも美しいセカイにて

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このくだらなくも美しいセカイにて

 世界なんて滅んでしまえばいい。私はずっとそう思って生きてきた。  だって退屈で、なんの面白みもない。そのくせ、嫌なことだけは年中無休で襲い来るのだ。 「マジ最低。カサコの隣の席になるとかさぁ」  トイレの中に私がいるとは気づかなかったのだろうか。カサコ、というのは私のアダ名だ。笠井という苗字から取ったのだろう。  席替えで隣の席になったクラスメートの女子が、友達に愚痴っているのが聞こえた。私は個室から出るタイミングを逸してしまう。 「お気の毒だねぇ、サヤちゃん」 「ほんとそれ。これだからくじ引きは嫌だつったのに。好きな人同士で班作らせてくれればいいじゃん」 「だよねー。でも、それ前やったらもろにカサコが余ってたじゃん?先生もそれ見かねたんじゃないの。つか、カサコ本人が“好きな人同士で席替えさせないで”って頼んだ説もある。毎回絶対ボッチになるしさ」 「ボッチになるのはあいつがキモいからじゃん!自業自得なのに、マジでうっぜー」  虐められている、ということになるのだろうか。言われるのは精々これくらいの悪口で、別に物を隠されたりしているわけではないのだが。  私はトイレでため息をつく。 ――キモいのが駄目って言われても。私にどうしろっていうの。  不細工な顔も、太りやすい体質も、社交的でない性格も生まれついてのものだ。休み時間も気を張って笑顔を振りまいて、クラスメートとお喋りして貴重な休み時間を潰す――なんて私にできるはずもない。退屈な授業を毎日毎日長い時間聞いていなければいけないというだけで疲労は蓄積しているというのに。 ――いいよね、可愛くて、人と話すのがストレスにならない人は。……私みたいな底辺の気持ちなんてわかりっこないんだろうな。  小学生、中学生、そして高校生。  どれだけ月日が流れようと、私の暗い学生生活に光が当たることなどなかった。 ――ああ、セカイなんて、なくなっちゃえばいいのに。
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