夢か現実か

1/1
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

夢か現実か

 ……すごく奇妙な夢を見た。  先ほどまで見ていた夢の内容を、わたしは明確に覚えていた。  夢に出てきた"神"——わたしはその子のそばにいた。不思議と向こうからはわたしが見えていないようだった。  夢の中で見た天国と地獄——あれは本当にただの夢だったのか?  わたしは寝ている間に、臨死体験みたいなことをしたんじゃないか?  一列に寝かせられた魂たちを思い出す。  人間は死んだら、あんなふうに——。  「おはよう。……どうしたの? 顔色悪いけど」  ガチャリとドアノブを回して入ってきた夫は、青白くなったわたしを見るなり、心配そうに尋ねてきた。  「朝ごはん作ったけど……大丈夫? 食べられそう?」  「あ……大丈夫。軽い貧血だから」  「そう? 無理しないでよ」  彼の優しさに、胸があたたかくなる。  本当にわたしにはもったいないくらいの完璧な夫——。  しかし、そこまで考えて、ハッと思う。  今の幸せは、現実のものなのか?  この満ち足りた日々は、もうとっくに死んだわたしが見ている夢——架空のユートピアに過ぎないのではないか——。  「どうしたの? 怖い顔して」  彼が首を傾げる。その様子を怖々と見つめる。  この世界が現実なのか。はたまた幸せな夢なのか。  それを確かめるすべはどこにもない。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!