12人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
夢か現実か
……すごく奇妙な夢を見た。
先ほどまで見ていた夢の内容を、わたしは明確に覚えていた。
夢に出てきた"神"——わたしはその子のそばにいた。不思議と向こうからはわたしが見えていないようだった。
夢の中で見た天国と地獄——あれは本当にただの夢だったのか?
わたしは寝ている間に、臨死体験みたいなことをしたんじゃないか?
一列に寝かせられた魂たちを思い出す。
人間は死んだら、あんなふうに——。
「おはよう。……どうしたの? 顔色悪いけど」
ガチャリとドアノブを回して入ってきた夫は、青白くなったわたしを見るなり、心配そうに尋ねてきた。
「朝ごはん作ったけど……大丈夫? 食べられそう?」
「あ……大丈夫。軽い貧血だから」
「そう? 無理しないでよ」
彼の優しさに、胸があたたかくなる。
本当にわたしにはもったいないくらいの完璧な夫——。
しかし、そこまで考えて、ハッと思う。
今の幸せは、現実のものなのか?
この満ち足りた日々は、もうとっくに死んだわたしが見ている夢——架空のユートピアに過ぎないのではないか——。
「どうしたの? 怖い顔して」
彼が首を傾げる。その様子を怖々と見つめる。
この世界が現実なのか。はたまた幸せな夢なのか。
それを確かめるすべはどこにもない。
最初のコメントを投稿しよう!