第三章 未来の光、過去の影

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「では、僕が鏡に映ったきっかけは考えられませんか?」 「……学校で進路の話が出て、将来の不安を感じていました。それに、あのオカルト雑誌は時折読んでいて、いつかフォーチュンストリートに行きたかった。同年代の花神さんの存在を知ったら、とても気になったはずです」 「未来予知がなかったとしても、僕と知り合う機会は十分考えられた。そこへ割れやすいグラスの運命が重なったわけですね」  何らかの原因が存在したとき、目に見えるシグナルとして異能が働くのだろうか。 「あくまで推測ですが、鏡に映るのは色んな条件が重なって起こる確率がとても高くなっている未来なのだと思います。また、誰かのターニングポイントで、何気なく見えても、運命の瞬間であるのかもしれない。毎日の学校生活や食事シーンが未来予知に現れない理由にもなると思います」 「ありふれた日常でいいのにな。そうしたら、同じ鏡を見るのでも、アルバムみたいで楽しいのに」  見上げた花神の横顔は、そんな発想はなかったと言いたげで、クスリと笑っていた。堅いイメージの彼の素顔をみたようで、未知留には意外な発見だった。 「魔法の森のスピリチュアルな力を借りれば、出来そうですね。その為にも今日はこうして来て頂きました」  遊園地を楽しむ人々は、誰もが目を輝かせている。風水的な良さだけでなく、ポジティブな人の想いが積み重なり、名前通りオカルト界の魔法の森となっていった。この場所なら不思議なことが起こりそうな、そんな気がする。
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