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不倫をされたときに頼りになるのは、赤の他人
絵に描いたような笑顔溢れる家庭というわけではなかったけれど、平穏な家庭ではあったと思う。
「関本亜希乃さんですか?」
どこにでもある普通の家庭というものを経験していると思っていた。
「姉ちゃんの紹介で来ました」
ごくごく普通に年を重ねていって、旦那とは平凡な老後を送るものだと思い込んでいた。
「シナリオライターをやっている、布村倫樹です」
待ち合わせ場所に現れた彼が浮かべていた笑顔がとても爽やかで、年甲斐にもなく心臓を高鳴らせてしまいそうになった。
「亜希乃さんの話、聞かせてもらえますか?」
私が生きてきた世界には存在しなかった。
彼は、私が生きてきた世界に新しい色を加えるために現れてくれた。
そんなことを思ってしまうくらい、彼の笑顔に私は一目惚れをした。
「旦那は家族全員の口座管理をしていたのですが……」
「丁寧に喋らなくていいですよ」
私が彼と知り合うことになったきっかけは、私の愚痴に聞き飽きた友人が手を差し伸べてくれたから。
相手の愚痴を聞くことに疲れ切った友人が、経験談を物語風にして世に公表してしまえと言った。
「でも、一応は取材……」
「亜希乃さんが話しやすいように話してください」
芸能人でもなんでもない一般人の私たちができる復讐なんて、それくらいのことしかない。
最初は友人が何を言っているのか分からなかったけど、思考が冷静さを取り戻すとそういう復讐方法もありだと考え始めた自分がいるのだから恐ろしい。
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