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浅葱色の羽織は上半分は真っ赤に染まっている。
男は刀を払って血糊を飛ばしながら重助に近づいてきた。
暗がりでも顔の輪郭はハッキリみてわかるほどの距離に詰められた時点で重助はその男の正体を知った。
「く、くるな、沖田!助けてくれ。ほんのちょっと前まで同志だったじゃないか!」
そう言いながらも重助は手に当たった石を無造作に掴んで沖田に投げつけた。
そのあがきを沖田は左袖で払いのけた。
その一瞬の間で重助は立ち上がり後ろに振り向いて逃げようとした。
が、それが合図のように沖田は大きく一歩踏み込んで逆袈裟に背中を切り上げた。
その衝撃にエビぞった重助は両手をあげたが、倒れ込むことなく両膝をついてとどまった。
「この人殺ししか能の無い奴め。そんなに殺しが楽しいか!」
重助は後ろを振り向かず言葉だけで罵った。
しかし、沖田は答えることなく後ろから横一文字に刀を振り払い、重助の首を刎ねた。
頸動脈から血が迸り血の雨が一面に降り注いだ。
雨となった返り血が沖田の全身を覆いかぶさる。
いつもと同じ鉄の匂いを感じながらも、沖田はいつもと違う不快をおぼえた。
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