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京都、島原近くにて
暗闇の中、半裸裸足でバタバタと走る男がいた。
「何をしてる、早くついてこい。殺されるぞ」
重助は後ろを振り返り、必死に追いかけてくる女に声を浴びせた。
「もう無理、走れない」
下衣一枚に裸足の糸里は膝をついてしゃがみ込んでしまった。
「走れなくても逃げろ。女だからって容赦ない連中だぞ」
そう言って4〜5歩引き返して糸里の手を取った。
糸里は少し嬉しそうに手を握り立ちあがろうと膝を浮かせた。
すると突然、糸里の身体が不自然に斜めに浮き上がった。
取った手の負荷がいきなり軽くなった重助は目を丸くした。
糸里の背後に浅葱色が旗巻くのがちらりと見えたかと思うと、胸元から刀の切先が飛び出してきた。
重助は思わず手を離し尻餅をついた。
うなだれる糸里の影からすくっと立ち上がった男は無造作に刀を引き抜くと、身体の前後から血飛沫が飛び散り辺り一面が真っ赤に染まった。
正確に大動脈を貫いていた刀身の関をはずしたからだ。
糸里は無言のまま事切れた。
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